110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

リスク(ピーター・バーンスタイン著)

 本書は1998年日本経済新聞社刊行のもの私は日経ビジネス人文庫版で読む。

 賭け事の必勝法としての確率から現代の金融市場を御する金融工学の流れを通じ人間がリスクを理性的に回避する方法、すなわち(不確実性という)神々と渡り合うその思考の流れを記すという作品。
 文庫版では上下になっているが前半は哲学や数学史といった感覚が強く後半になるとビジネス書というカテゴリらしくなる。
 さて、人間は理性で例えば金融上のリスクを制御することができるのか?
 将来にわたって断言は出来ないが本書のレベルでは不可能ということになろう。
 しかし、それでは直感や信仰に頼れば良いのかと言えばそうではない、たとえ不完全であろうと確率を判断の手引きとするべきだというのだ。

 批判的な話をすれば、本書の刊行後にもご存知のようにリーマンショックは起こり、(ビジネスとは視点は異なるが)わが国で大地震直後に前代未聞の原発事故が発生した。
 これらの事故は確率的には殆ど想定できない範囲のはずだったであろうが、その確率がゼロでない限り起こってしまうことがありえることを実証したわけだ。
 まぁ、今ある世界も何にも無いところからビッグバンという気が遠くなりそうな小さな確率から起こったことを考えれば、神々と人間はまだまだ共存していく必要がありそうだ、本当の理性への道のりはまだまだ長そうだしね。