110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

暇と退屈の倫理学(國分功一郎著)

 本書は2011年朝日出版社刊行のもの。

 題名からしてお手軽な内容かと思ったらとても重要な問題を提起していた。
 暇で退屈なのはある意味平和的状況なのだからこれを超越することなく対応していくということ。
 それには、「消費」ではなく「物」を受け取れるようになることと、<動物になること>という結論に到達する(らしい)。
 一つのものに打ち込んでいける人は羨ましい。
 プライベートなことは知らないけれども、表向きのイチローという人はそういう存在ではないかと思う。
 彼は野球をするということでは相当な深さを持っているだろうし、退屈なので、他の事で気を紛らせる必要もあまりないのではないか?
 逆に、そういうものがなく漫然と暮らせてしまう人(私?)は、あらゆる妄想をもって、どうしようもないことに時間を費やすことになる。
 
 この著者は1974年生まれ、私より一回り以上若いわけだが、こういう論考を残せる、羨ましいことだ。
 多分、ご自身はもっと深く本書の論考を追求したいところもあるのだろうが、相当大部なものになりそうなのでそれを出版できるかどうかは、まぁその時の状況によるだろう。

 19世紀、20世紀前半の大哲学者(思想家)は、この「退屈」に対応して社会を変えようとしたとも思える、そういう(本書にも出てくる言葉で)「決断」が軋轢を生む原因だったのかもしれない。
 これに対して本書では個別に対応することを記しているように思う。
 そこが少し気になっている(別に批判するつもりではないけれども)。