110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

グレン・グールド孤独のアリア(ミシェル・シュネデール著)

 本書は1991年筑摩書房より刊行されたもの、私は1995年初版のちくま学芸文庫版で読む。

 変な人だということは知っていたけれども、具体的にはどんな人なのか、まぁクラシックの世界は関係ないやと言ってすかしてきた。
 それが、たまたま本書が安く手に入ったので読むと、なかなか考えさせられるところがある。
 一応、動画を探すと、グールドについてのTVドキュメントがあったので見た。
 感想は一言「良いね」
 こういうピアノを弾く人がかつていたんだということ、その音が残ったということはとても有意義な事だ。
 坂本龍一がコメントしていたけれども、その曲を作曲したかのように弾くというということ、すなわち、譜面に書いてある音を全て弾くということ、これは実際に聞いてもらうしかないけれども、凄いことだ。
 そして、その努力は酬われて、グールドのピアノはその音がそれぞれ粒立って聞く人のところに届くのだ。
 いやはや!死後35年もたってファンになってしまった。
 自分はギターを弾いているのだけれどもそういうギターが弾けるように精進しよう。
 まず無理だが・・・・

 さて、本書について思ったことは、グールドが「今」活躍していたらということだ。
 確かに、その天才性で知名度を得るまではコンサートをしなければならないだろうが、その後32歳でコンサートから引退しても今ならば全く問題はない。
 例えば、インターネットで自分の動画を公開すれば良いことだし、曲の完成度をあげる為の録音・編集作業も、デジタル化されたおかげで、グールド自身が気に入るまで何度でも行うことが可能だ。
 下手すると、自分ではもう弾かずに、デジタル音源を相手に究極の打ち込みを行ったかもしれない。
 また、グールドの奇行とされたことも、現在ならばなんの問題はない。
 いわゆる「ひきこもり」だが、彼は社会的には引きこもっているわけでもなく、その天分で十分自立して生活していたわけだ。
 本書で、彼の話していたこと発言を読むと、未来を予言のではないかと思えるような言葉がでてくる。
 そして、当時彼の住み辛かった世界は、今、異なる世界となっている。
 私(凡夫)は、今の世界は、多少住み辛いと思うこともあるけれども、彼のような究極の生活をしていた人にとっては時代がある程度追いついたと思うのではなかろうか?

 でも凄いよね、ゴールドベルク変奏曲をデビュー時と死の直前と2回録音しているけれども、ピアノが素人の眼で見ても進歩しているものね。
 あ、本書の評価はどうだって?
 こういう本の読み方もあるよね。