110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

どっこい大田の工匠たち(小関智弘著)+α

 本書は現代書館刊行のもの、そして+αは「舟を編む三浦しをん著/光文社)だ。

 「どっこい・・・」の方は、大田区に町工場を構える、いわゆる名工のインタビューを編集したもので、ノンフィクションである、「舟を・・・」は辞書の編纂をテーマにした小説で2012年の本屋大賞第一位のもの、結構話題になったので興味はあったが、ここにきてやっと私の手元に来たわけだ。
 たまたま、昨日、この2冊を入手して読んだ、毛色が違う本の様だが、その根底には、職人気質があるのではないか。
 一つの技能を長年に渡って磨きつづけ、その果てにたどり着いた「境地」みたいなものが伺えるのだ。
 さて、この2冊を評価すると、物語としての手腕は(当然)三浦氏のものだが、総合的な内容については小関氏の方に軍配を上げたい。
 「どっこい」は小説ではないので、物語性を期待する方には面白くないと感じる人もいるだろう、しかし、本書の匠たちの実際の言葉は、フィクションでは作れない程面白いのだ。
 私的な評価ながらこんなに差が出るとは、われながらびっくりした。
 「舟を・・・」の方は、残念ことにそのテーマを描くにしては全体が短すぎたと思う。
 しかしながら、もし、このテーマをきっちり書いていったら、いったい、何人が読みこなせたろうか?
 多分、読者も時代とともに変化しているという事であり、それに合わせたと言うことなのだろう。
 そんな事を考えた。