110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

老人支配…か?

選挙に行こう!投票しよう!そして老人支配を追認しよう!?
島澤諭 | 公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長
7/5(金) 8:00
選挙戦が始まり各党の公約が出そろった。
各党の公約(NHK選挙WEB)
消費増税を財源として主張する自民党公明党を除き、相変わらず安定した財源を明記しないまま全世代への給付を拡充する大盤振る舞いが続く。
こうした大盤振る舞いの真のコスト負担者は誰なのかは昨日の記事(各党の公約を世代会計で診断するとわかること)でも書いた通り、必要なデータが出揃えば、世代会計で明らかにすることができる。
日本には深刻な世代間格差が存在するが、実は、現在世代が将来世代を搾取する構造と高齢世代が若年世代を搾取する構造の二重構造となっている(拙著『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞社)に詳しく書いてあります)。
現在の全世代型社会保障の流れは、高齢者への給付の温存さらには拡充しつつ若者への給付を拡充するものだが、これはシルバー民主主義というよりは高齢世代と現役世代の暗黙の共謀と捉えられる。なぜなら、財源は赤字国債の発行に実質的に依存したままだからだ。要するに、現在の全世代型社会保障は将来世代の犠牲において現在世代が利益を得る政策なのだ。
結局、消費税率引き上げの凍結は現在世代が将来世代への責任を放棄することなので、消費税率引き上げ凍結等を主張している政党は、将来世代を犠牲に票を獲得しようとしている。
一方で、現在の日本の財政・社会保障制度における受益・負担構造は、右肩上がりの人口・経済を前提としたままなので、先細り貧乏になっていく現役世代が、以前よりは豊かになり膨れ上がっていく高齢世代を、世代間連帯という美名のもと、実は現役世代が片務的に高齢世代の面倒を見させられているのが現状である。世代間連帯とは本来双方向のものであるはずだろう。
この片務的な世代間連帯の構造改革なくして、現役世代と高齢世代の間の世代間格差の是正はないのだが、これに関して是正策を積極的に主張する政党は残念ながら見当たらない。つまり、この点では、なんだかんだ、日本はシルバー民主主義である。
結局、こうした二重構造を放置したまま「選挙に行こう!投票しよう!」と言っても、シルバー民主主義とそれに相乗りする高齢世代と現役世代の暗黙の共謀を強化するだけだ。
つまり、選挙に行こう!投票しよう!そして老人支配を追認しよう!と言っているのに等しい。
人それぞれではあるものの、選択肢がないと考える場合の選挙でも有権者は選挙に参加しなければならないのだろうか?さらには、棄権という選択を行ったとしても、その個人は選挙に対して結果責任を共有しなければならないのだろうか?
 
 面白いコラムだった、ただし、コメントによくあるパターンで「じゃあどうするのよ」が見えてこない。
 また、この著者も、あと数十年で「老人」の仲間入りの風貌にお見受けする、「いや、僕は永遠に歳を取らないんだ」なんていうフレーズを冒頭に入れていただければありがたかった。
 私は、あと2年で老人(還暦)の範疇に入る、だから、複雑なところにいる。
 もし将来、世代間格差を煽りそれが一般世論になったとして、当の高齢者がその年代層で自治をしはじめたらどうなるのか?
 (今の)彼らは資産を持っている、そんなに、若い世代が非難するならば、高齢者世代で極力自治するようにすると決めたら?
 その時の若い世代は快哉を叫ぶだろう、しかし、当面は高齢者はお金を持っているから、なんとか自助・自治を続けられるだろう。
 しかし、それが、歳を経て、貯蓄や資産を持っていない年代層が入り始めると破綻するだろう。
 まぁ、そのシナリオでも私がその時にいくつなのかにもよることになる、もう鬼籍に入っているかもしれないのでね。

 さて、実は、ロジックは全く異なるのだが、今回の参議院選については、この著者と同じ意見だ。
 棄権しかないのか?
 
 参議院の議員数がひっくり返っても、現与党連合には影響はない、多少議会審議が遅れることはあろうとも関係なかろう。
 「国民の意思を示した」なんていう絵空事で満足できる状況じゃないだろう?
 だから、ここは、野党連合としては、政権をひっくり返せるだけの潜在能力を示す機会だと思うのだが、意外と足並みは揃っていないように見える。
 野党贔屓の私も、20世紀の終わり事、野党連合で政権を担ったことがあるが、その時の空中分解を思い出しつつ、もし、今回、自民党(与党)にお仕置きだなんて考えている人は、その時のことを少し調べて欲しい(まぁ、一枚岩に見えた民主党世間のお粗末という話もあったね)。
 そもそも、野党は現在の国の懐(財政)が(ほぼ)わからないので、財政措置にからむほとんどが絵空事になる、だから、政権を担っても、大きな失敗をして傷を深めても「良い」という覚悟があるのか?ということを考えると、やはり、今回逃げ出したくなる。
 また、今回風向きは野党連合側だけれども、私、未だに、前原誠司民主党希望の党(当時、確か)の連合で対決しようとした時に、民主党が分裂して現在の姿になった事が引っかかっている。
 そう、与野党均衡はあの時が最後のポイントだったのではないかということだ。
 だから、そういう観点からも(野党に)投票しづらい。

 この国は、既に現与党の肩にのっかってしまっている様に思う、だから、行きつくところまで行ってしまうしかないのではなかろうか?
 細かく見ると、憲法や沖縄問題で、自民、公明間の差異が与党内で生まれているのが際立っている。
 だから、今回は「忍」であろうかなと思う。

 まぁ、若い世代が圧倒的に不利と言う、いわゆる極論だけをひけらかすのは構わないけれども、そいつは、高齢者を亡き者にしない限り無理な空論を叫ぶことになるのではないかな。
 そして、若い人の「税負担」なんてことを書く人は、もしかすると、働いてはいないけれども、最近はやりの「年収180万円の若者」よりは、高額納税している後期高齢者が結構いるのではないか、なんていうことは思い浮かばないのだろうね(固定資産税とか、所得税のうちでも株式配当とかね、当然消費税はみんな平等だよね)。
 「高齢者は納税者でもある」という基本的な事をわざわざ無視する論調には、なんか怪しさがあるのだが、意外と多いね。
 そういう風に詳細に考えると「勧善懲悪」的な文章が書けなくなるって?
 でもそれが現実だよね。