110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

柳宗悦 妙好人論集(寿岳文章編)

 柳宗悦が「妙好人」について論じた文章を集めたもの。

 本書内の「仏教に帰る」の冒頭部分、
「私の若い頃の気持ちは、今の若い人々のそれと何も根本的には変ってはいまい。ともかく過去の日本は古くさく思われ、新しいものをと偏(ひと)えに追った。ほとんど凡ての若い者は、反抗的である。これがあるために生長があるのであるから、そういう反抗が何かの意義を背負っていることは否定できぬ。・・・」
 この文を立ち読みして、買おう(読もう)と思った。

 さて「妙好人」とはなにかというと、
 「【妙好人】とは、白い蓮華のような清らかな信心を、篤く身につけた信徒たちを讃えて呼ぶ言葉なのである。」(「妙好人」より)
 特に、「浄土真宗」を信仰している人に多く見られるようで、「真宗」についての論説が多い。
 これは「浄土真宗」の賞賛のための本なのかと一瞬思ってしまうが、そうではないと思う。

 これは、解説に書いてあるのだが、柳宗悦は1956年に病気になり、死亡する1961年まで病床にあった。 闘病生活の苦しさで、周りの人にあたったり、怒りを感じる自分に対して「妙好人」という先立がいるという事が或る意味、憧れであり、慰めであったのではないか。
 「・・・合理的たること、必ずしも深い理解とはいえぬからであります。人間の論理的理智に、明らかに一つの限界があるとしますと、そこにのみ人生観を托すわけにゆきません。それ故宗教は、合理主義に満足できないところに、その場所を持っているともいえるのであります。」(「宗教と生活」より)
 
 自分が、あと何ほどの間生きられるかを知る事はできないが、何か「その時期」を感じた時には、準備をする必要があると思う。
 それは、必ずしも「宗教」である必要はないと思うが、合理性の及ばないものを考量できるものでありたい。
 そういう時に、死を前にしても泰然としている「妙好人」のことを思い出すことになるのだろうか?