110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

宮沢賢治(見田宗介著)

 先回の「気流の鳴る音」と同一人物による作品(著者名は変えている)。
 本作は、高校生向けに書かれているということだが、却って、説明が詳しくて分かりやすい。
 初刊行は、1984年の作品だが本書の目論見とおりに、その当時この本を読んだ高校生は(いるとすれば)ある意味とても羨ましい。

 宮沢賢治の数多くの手稿から、どのように各作品を考えたかを分析し、彼の自我がどういうものかを探り出していこうとする。
 最後には、宮沢賢治の思想的・身体的な挫折というところに追い込んでいくが、それまでの分析の仕方は鋭いものがある。
 本作でも、「気流・・・」のなかで説明された「トナール」と「ナワール」という言葉が出てきた。
 最後は、名著といわれた「自我の起源」にたどり着きたいが、ここでも、「トナール」と「ナワール」という発想は維持されているのだろうか?
 残念ながら、この本(「自我・・・」)は、プレミアが付いて高価なので今は手が出ない。
 そのうち、岩波書店筑摩書房で文庫本にしてくれる事を祈っている。

 宮沢賢治の挫折の奥に、現代(文明)の挫折が見え隠れするのだが、それについて、(本書で)見田氏は、何の意思表示をしていない、この件に関しては、他の作品を探る必要がありそうだ。

 さて、内容とはかけ離れるがこのような言葉には共感を覚えた。
・・・野原に限らず町でもどこでも、よるべない土地をひとり行く徒歩旅行者に雨はつねに恐怖をよばずにいない。・・・
 「徒歩旅行者」なら真にわかる。