110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

チベットのモーツァルト(中沢新一著)

 中沢新一氏の著作は「カイエ・ソバージュ」を数冊読んだことがあり、社会学系の人かと思っていた。
 今回、本作を読むと、奇しくも前回紹介した、カスタネダの著作についてのコメントがあったり、本人がチベット密教修行へ行ったりと、カスタネダとの共通点が多かったので、あくまで偶然で選んだ2冊がシンクロしたことになる(実は、「気流の鳴る音(真木悠介著)」も本作に出てくるので、その度合いは更に強い)。
 そして、本作の経歴を見ると、「宗教学者、思想家」とある。

 本作の前半は、仏教の修行を通して見た、仏教哲学と現代(近代)思想の融合を目指している作品が多いように思う、中沢氏は、ポスト構造主義的な作品とコメントしているが、読んでみると、レヴィ=ストロースラカンなどの、どちらかというと構造主義の思想への系統が強く、逆に、構造主義のある種の限界の中で、どのように、変化・適合させていくかという立場のようにも思える。
 これは、「カイエ・ソバージュ」でも、同様に感じたことではある、もしかすると、社会学的なフィールドワークや分析では、レヴィ=ストロースの様な手法の後継がなく、「思想的」にはポスト構造主義なのだろうか?
 それとも、ドゥルーズデリダあたりを意識しているからそうなのだろうか?
 微分-差異化なものを中心にしているからだろうか(それならば構造を維持しにくいはずだが)?

 そういう些細な事は置いておいて、本作での、仏教(密教)を元にした思想へのアプローチは、日本的な(独特の)手法として、好感が持てた。
 ただ、論理としては、多少無理がある様に思うところもあった。

 (その様に「言葉」で考えるレベルではだめなのだと反撃されてしまいそうだが・・・・)