110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

世論(W.リップルマン著)

 世論についての著作、原作は1922年にアメリカで刊行された。
 第一時世界大戦後の作品だが、現在読んでも面白く読める。
 人が何かを判断する時には、過去の経験を元に判断をするのだが、その経験そのものを再体験できないので、適当な観念をもつ言葉、本書では「ステレオタイプ」というものに還元していくという考え方を示す。
 パブロフの犬のように、ブザーが鳴るとよだれがでてくるということほど、単純ではないのだが、ある事柄から連想される評価(善悪とか快不快のようなイメージ)を、単純化して記憶し、対応していくという事が書かれている、
 そうしないと、多様な事象の判断ができないのだ(もしくはすごく時間がかかる)。
 人は、経験した事を、ステレオタイプという形で、自分としての価値判断で、意味をコンパクト化(抽象化)して、次に、キーワードが出てくると、すぐにその評価を呼び出せるようにするということをやっている(らしい・・・確かにそう思う)。
 そして、その後、世論の構成される過程において、それぞれの個別の細かい判断や評価が削げ落ちていき、最後はイエス・ノーと言った簡単な結論に至る事を示す(それしかとりようがないし)。
 それならば、個々人の多様な意見はどうなるのかと言うと、より抽象的な判断基準(ステレオタイプ)に基づいて、協調することになる。
 そのような事について、今まで、そういう風に考えたことが無かったので「なるほど」と思って読んでいた。

 正に、この事例が、先日の「参議院選挙」の自民党の評価立ったのでは無いかと考えていた。
 言葉は悪いが、自民党民主党も、政策に関しては特筆するべきところは無かったと思う、却って、実際に政権を取ったときの不安要素・経験不足は、民主党の方が大きいと思う。
 しかし、世論の風潮、もっと端的に言えば、あの時点で、自民党が「(感情的な要素として)嫌い」と言う人が、単純に多かったのだと思う。
 参議院選挙の結果は、ある意味、政治的なバランスと言う面ではよかったと思うが、現在政治に携わられている方々からみると、一触即発で、場合によると政治の本筋から外れたところで、(選挙)結果が左右されるという状況であることが、再確認されたものではないかと思う。
 このようなイメージによる、選挙に(明らかに)持っていったのは、小泉元首相のあたりからだと思うので、ある意味、自分の仕掛けに自分(の弟子)がはまったという事かもしれない。

 当然、本書には現在のような、高速で大量の情報網は考慮されていない。
 しかし、新聞は真実を(必ずしも)語らないという趣旨の文章があったことから見ても、現代に通じる視点が有るように思った。