110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

身体の現象学(市川浩+山崎賞選考委員会著)

 本書は「哲学奨励山崎賞」の第3回受賞者としての、市川浩氏(「精神としての身体」)の受賞式の時に行われたシンポジウムの記録で、錚々たるメンバーによる討論になっている。
 刊行は1977年で、実際のシンポジウムは、1976年6月12日に行われている。
 
 思想や哲学というものも、時代の影響を受けて、流行りといわれるものが変わることは事実だが、この30年も前の本が(その他の同様な本も)、今も変わらぬ新鮮さで読めるということは、大変嬉しいことだ。
 
 精神と身体を分離して考える2元論にたいして、身体と精神は一体であるとする、市川氏の思想を、和気藹藹とした雰囲気のなかにありながら、根本的な命題をえぐるようなところまで、議論が進んでしまう。
 そういう、凄味を感じさせてくれる本であった。

 こういう、哲学系の博学な人達は、もう少し、自分の考えを押し出すものかと思っていたが、意外に柔軟な視野を持っていることが、分かったりして面白く読めた。
 また、議論のとこころどころで発生する「脱線」が、却って面白く感じられた。
 (例えば、東洋的と西洋的な思想の違いなど)

 また、同時に、以前読んだはずの「精神としての身体」について、理解の浅さも痛感させられてしまう本でもあった。