110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

社会思想の歴史(生松敬三著)

 本書は1968年に刊行されている、現在は岩波現代文庫に収められている。

 社会思想の歴史という表題だが、副題に「ヘーゲルマルクスウェーバー」あるとおりに、この3名とフロイトを中心に著作が進んで行く。
 社会思想という言葉からイメージされる人物像が、どのようなものか、興味があったが、本書で中心となる各氏の時代は「哲学」が、ある意味万能だった時期から、社会学や経済学のように、哲学から更に細分化されてくる変化の時期でもあったようだ。
 資本主義(合理主義)による、人間の阻害に対して、マルクスウェーバーフロイトも、それぞれの視点から「警鐘」を与えているし、マルクスは、御存じのとおりに社会体制自体を変化させてしまった。
 しかし、資本主義は残り、疎外感は消えていない、もしかすると、人間の方が適応(進化)してしまったのだろうか?
 ほぼ、完全に支配されているのではなかろうか?

 生松氏は、これらの思想の関係を、手際良くまとめているので、とても分かりやすい。
 いままで、あまり、注目していなかったウェーバーについて、少し、興味がでてきた。
 解説にもあったが、本書で語られていない重鎮は、ニーチェだと思う。

 さて、その社会主義について、ふとよぎった思いがある。
 20世紀の後半に、ソ連が崩壊し、資本主義に対する、社会主義の対立に決着がついたように見えた。
 しかし、21世紀になって、中国が台頭してきた、今世紀の前半で、GDPで日本は追い抜かれるという予想がある、もしかすると、アメリカもいつか追い抜かれるかもしれない。
 そのような状況になったときも、また、その要因が、中国の資本主義的な経済政策によるものだとしても、やはり、イデオロギー的には(当然)社会主義なのだろう。
 
 その時には、特に戦闘状況ではないのだろうが、再び、対立することになるのだろうか?

 もしかすると、マルクスは(思想的に)死んでいないのかもしれない。
 などと考えてしまった。