110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

意味とエロス(竹田青嗣著)

 竹田氏の作品は、入門書ばかり読んできた、とても説明がわかりやすかったからだ。
 しかし、今回は、氏の哲学書のデビュー作となった作品で、入門書ではない、刊行は1986年、現在はちくま学芸文庫で読める。
 
 さすがに、内容は分かりやすいとは言えないが、それでも、いつもながらに、丁寧に、意図を伝えようとする文章で、他の作品も読んでみたくなった。
 そして、本当に「現象学」が好きなのだなぁ、と思った。
 
 ハイデッガーもつきつまるところ、フッサール現象学が分からないと、理解できないという趣旨の文章を見て、少し考えされている。
 確かにそうなのだが・・・(難しというイメージがあるんですよ)。

 本書は、哲学書なのに何故か元気が出てくる本で、こんなところがある。
 ところでフッサールのこういった現象学的還元なる方法が私たちに告げているのは一体なんだろうか。それはおそらく、デカルトが言ったような、「一生に一ぺんだけ」<世界>や<人間>について徹底的に考えつめておくと大変精神にとって有益であるような思想上の方法なのである。つまりそれはこんなふうに語っているのだ。一度ほんとうに腰をすえて私たちが自明なものと考えているこの<世界>の根底をかんがえてみればいい。誰の<世界>像も自分では確かめ得ないさまざまな<臆見>(=通念)を抱えこんでいることが判る。そしてその<通念>の根拠を本気で問うなら、それがなんの根拠も持っていないことが知れる。論理というものを適切に使用しさえすれば、ほんとうにそのことはすぐ露になる。だから世界を考えてみようとするときに、悪い理路とよい理路というものが必ずあるのだ。それを簡単に言うことができる。・・・それは絶対的な<世界知>の探求、あるいは<世界観>への硬直した固執を、自ずと解いてしまうような論理の進め方なのだ、と。
 
 今時、古い哲学や思想を読んでいることについて、本書を読んで、勇気づけられるところがあった。