110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

日本の禍機(朝河貫一著)

 本作は、明治42年(1909年)に刊行された。現在では、表記法を変えて読みやすくした版を、講談社学術文庫で読むことができる。奥付をみると刷数が更新されており、本書を読まれた方も多いと思う。
 
 本書では、日露戦争後の日本の外交に関して、警告をしており、強硬に満州の支配を押し進めると、大儀を失った上に、米国との戦争状態に陥る可能性を示唆している。
 本書の刊行時点においては、日本は、その強硬な姿勢を崩し、和解の状況になったようだが、その後、30年程を経過して、起こった事件は、歴史に大きく刻まれることになった。
 朝河氏の、その先見性に驚愕するとともに、その当時において、エール大学教授として存在した人材が日本から生まれていたことも、併せて、驚異とするべきかもしれない。

 ・・・もしかの強国が東洋に新外交の二大原則を強行するをもって天職とするがごとき事情に至らば、日本が東洋の文明主国としての立場それ何処にありや。ただ永く貪欲の小国として汚名を竹帛(ちくはく・・・書籍・史書)に垂れ、かえって遼遠なる西洋の一国をして、当然我に属すべき光栄を取らしむるにとどまらんのみ。

 ある意味、本書の警告は悪い方で実現してしまったことになる。

 そして、複雑性においては桁違いだが、現在もまた、似たような外交を繰り広げていないだろうか?
 いや、それには、強国のような『力』が必要なのだろうか?
 政治の本質的な難しさを感じてしまう。