110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ワープする宇宙(リサ・ランドール著)

 先日、話をしていると、5次元宇宙なるものが話題になった、しかも、女性の理論物理学教授が提唱していると言う。
 ひも理論では、多次元を扱っているのを知っていたが、それは、5次元ではないし・・・と疑問に思ったので、帰ってから調べると、
 「おぉ、5次元だ、本まで出ている」
 ただ、今は、思想系を主に読んでいるから、と、写真を見ると・・・「買わねば!!」
 という、動機で購入したのがこの本です。

 内容は、とにかく素晴らしい、もとより、ブルーバックスが好きだった事もあり、この手の話は大好きでもある。ちなみに、「五次元の世界(副題:現代科学とUFOをつなぐもの)」というブルーバックスが手元にあるが、こちらは、本書ほど感動しない。ついでに、本書の中で「二次元の世界」という、国内ではブルーバックスで刊行された著作も紹介されているが、これは、以前読んだことがある、結構面白い話だったが、絶版とのこと。

 私にとって、このような理論物理系の著作を読むのは、久しぶりで、とうの昔に忘れられた「タキオン」という言葉に「ピク」としたぐらいで、最近の、余剰次元なるものを付加した、5次元の理論については、全く知らないことであったので、とてもわくわくした。
 そして、その仮説が正しさは、今年完成すると言う、大型ハドロン加速器で、実際に検証されるかもしれないのだ。

 更に良いことは、これらの、難しそうな理屈を、非常に簡潔に、数式を使わずに解説してくれる。
 ページ数が多いので、読むのに多少時間は掛かるが、とても楽しい読書になった。

 そして、このような、自然科学の最先端にいる人というのに、ある意味哲学的なものを感じた。
 (ただ、哲学は形而上的なところに達すると、検証不能になってしまうのだが)
 
 本書は、ただ読んでもらえば良い本だと思うので、最後に私的な話題をひとつ、
 事実がこれだけ奇妙であれば、もっと深い説明がなくてはならない。この十年の数々の不可解な発見から得られる非常に大切な教訓の一つは、時間と空間にもっと根本的な記述があるはずだということだろう。この問題を簡潔に要約するのが、エドウィッテンの「空間と時間は消える運命にあるのかもしれない」という言葉だ。・・・
 この時、大森荘蔵さんの「時は流れず」という本を思い出していた。
 哲学と物理学は、現代では別の世界にあるようだが、なんとなく、共通性があるのかなと思ってしまった。