110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

精神の生態学(G.ベイトソン著)

 何をいまさらという方もいらっしゃるでしょう。
 でも、私が本書を読み終えたのはつい先ほどなのです。
 ベイトソンについては、「ダブルバインド理論」について、いろいろな思想・哲学の本にとりあげられているので知っていた、本書も、そういう観点から手に入れた読んだのは1987年思索社版だ。

 本書を読み進めていくと、ダブルバインドという事よりも、第5部や第6部にかかって問題になってくる精神と科学の関係についての思索の展開が重要なものと思えてくる。
 例えば
 ・・・・
 (15)人間とそれを取り巻くホメオスタティックなシステムとが意識を介して連結するという現象は、もちろん、太古に遡る。しかしこの現象は、以下に述べる三つの状況的理由から、早急な解明が必要である。
 (16)その第一は、自分自身を変えるよりも、環境を変える習癖を人間が身につけてしまったという点である。・・・・
 (17)第二に、目的志向の意識と環境のパワーの比が、ここ百年急激な変化を示しているということがある。・・・・
 (18)第三に、ここ百年の間、意識をより無意識的な精神部分に根ざす諸々の修正プロセスから、切りはなそうとするような、特異な社会現象が顕在化してきている。・・・・

 ベイトソンにとっての二十世紀の二大イベントは「ヴェルサイユ(条約)」と「サイバネティクス」だという時、私見ながら「サイバネティクス」についての技術的な展開には多少疑問を持ちつつも、その背後の思想的なもの、ある意味哲学的な意味を考えると、未だにその問題提起、問題意識について、これを読んだ人に対して(実は人類に対して)回答を求めてきているように思える。

 今月は、一年の総決算の月だが、その中で本書は、今年の読書の中ベストな本のひとつであると思う。
 今頃「ベイトソン」に嵌まってしまった。