110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人間的自由の条件(竹田青嗣著)

 本書は2004年講談社刊行のもの。
 近代から現代に通じる基礎的な考え方の柱として、表題にもある「人間的自由」を考察する。
 それを考える時、近代哲学として忘れ去られた、ヘーゲルの思想が浮上してくる。
 ヘーゲルの哲学は「人間的自由」を中心にしていると考えられ、それ以降の、マルクスポストモダンといわれる現代に通じる思想と対比・批判していく。
 
 資本主義は矛盾を孕んでいると言われる、しかし、何故、社会主義ファシズムと言った、新しい体制にならなかったのか?確かに、20世紀初頭には、そういう面での危機的な状況が発生したが、20世紀後半になると、消極的な方法で、なにか結論が出てしまったようにも見受けられる。
 本書では、そんな問題意識に対するひとつの答えを見つけ出せる様に思う。

 しかし、たった一つ考えたことがある、全体のルールに対してだ。
 ヘーゲルの『美学講義』から引用されている部分の更に一部分だ、
 「・・・人間が自然から受けた困窮と暴力に報復すべく、自然の法則に反して自然を虐待するところにこそ、精神の正義と尊厳があると考えるのです。」

 確かに、人間は殆どの歴史において自然からの暴力を受けてきた、しかし、その自然も有限であることが見えてきた場合、すなわち、相手が相対的に弱くなった場合は、全体的なルールを変えねばならないのではないか?
 簡単に言えば、環境問題という制約のもとに、消極的に現体制を変えねばならないという人間の可能性を考えてしまった。
 それとも、自然科学(の知恵)がそれを凌駕するのだろうか?
 再び、近代の問題が一巡して、再提起されているように思う。