110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

アルチュセール全哲学(今村仁司著)

 本書は1997年「現代思想冒険者たち」というシリーズの第22巻「アルチュセール 認識論的切断」という題名で講談社より刊行されたものが、タイトルのように解題され講談社学術文庫版として出版されたものを読んだ。

 本書では、アルチュセールの生涯にわたっての思想を、今村氏が噛み砕いて解説してくれる。
 私には、アルチュセールは、マルクス資本論を基板とした思想家だという、思い込みがあったが、本書を読むことで、その後期思想では、マルクスと別れて独自の思想展開をしていたことがわかった。
 本書で「真空の哲学」と呼ばれる、彼の哲学への方法論は完成されないままに終わってしまった、しかし、その妥協の無い読み解き方は、後の世代に影響をあたえつづけることだろう。
 そして、彼がフーコーデリダドゥルーズを育てたことも大きな業績のひとつといえるだろう。

 しかし、残念なことに、私は、これらの思想を原書で読むスキルはない、ひたすら、日本語の解説や翻訳を待ち望む状況だが、何十年かのブランクはあれ、このような良質な思想に日本語で触れられること、その背景にある、日本の研究者の(その)情熱には感謝する以外ない。

 その、一人である、今村仁司氏も、昨年なくなってしまった。
 
 今村氏の本を読むと、また、違った思想家のリストができてくる、それまであまり興味のなかった、ベンヤミンジラールなども、先々その著作に振れてみたいと思うし、今回は、アルチュセールの中で、マキャヴェッリというキーワードを再発見した。
 マキャヴェッリというと、君主論そして、塩野七生氏もその思想について語っていた(礼賛)ことを思い出す、その同じテキストが、どう読まれているのか、というところに興味が行ってしまう。
 
 そして、今更、今村仁司氏のファンになってしまったことに気づいた。