110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

生きるということ(エーリッヒ・フロム著)

 本書はあちこちの本屋でもよく見かける。
 原作は1976年で、翻訳は1977年紀伊國屋書店から刊行されている。
 最近はカバーが刷新されたものも見たことがあるので、相当なベストセラーなのだろう。

 実は、本書を読んだのは2回目で、たまたま出てきた本書を読み始めたら止まらなくなった。
 たぶん、最初に読んだときはあまり良い読後感ではなかったと思うが、今回は、随分しんみりと読み進めた。 

 本書の主題は「持つこと」「あること」の比較対比ということ。
 その危機的な意味について、30年以上も前に本書で警鐘をならしているにも関わらず、未だ解決の方向性は見えてこない。
 このあたりは、既に読まれた方も多いと思うので省略して、
 
 面白いのは、次の引用の部分、これは、鈴木大拙氏の「禅に関する講義」で言及したことと、本書に記してある。

 イギリスの詩人テニソンの詩
 ひび割れた壁に咲く花よ
 私はお前を割れ目から摘み取る
 私はお前をこのように 根ごと手に取る
 小さな花よ もしも私に理解できたら
 お前が何であるのか、根ばかりでなく、お前の全てを
 その時私は神が何か、人間は何かを知るだろう

 日本の松尾芭蕉の俳句
 よく見れば なずな花咲く 垣根かな

 そして、鈴木氏の引用と別に、引用された、ゲーテの詩「見つけた花」
 ただ一人
 さまよった森の中
 何を探そう
 あてもなしに

 木陰に見つけた
 一輪の花
 きらきらと星のよう
 また美しいひとみのよう

 摘もうとしたその手に
 花はやさしく言った
 どうして私を折るのです
 すぐにしぼんでしまうのに

 私はそれを堀り取った
 根をみんなつけたまま
 そしてそれを持って帰った
 きれいな家の庭の中へ

 もう一度植えた
 静かなところ
 今はすっかり大きくなって
 花咲くようになっている
 
 3つの詩を比べてみる。
 日本にもとても大事な思想があったようだが、それは、今も残っているのだろうか?