110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

マルクスのために(ルイ・アルチュセール著)

 本書は平凡社ライブラリー版で読む。
 本書の底本は、1968年人文書院刊行の「蘇るマルクス」というものだ。

 さて、すでに、マルクス主義なるものは終わってしまっているという風潮が強いと思う。
 私も、何十年も昔に、大学の経済学部にいたころ、マルクス経済学を専攻すると就職に影響があると言われて、何も考えずにしたがった過去がある。
 すなわち、何の思慮も無く、世間のレッテルを鵜呑みにしていたわけだ。
 (だから「現代の若いものは・・・」などと苦言をいう資格はないだろうな)

 しかし、最近、(遅まきながら)思想系の本を読むようになり、本書の著者アルチュセールという人を知るとことになると、違った解釈ができるようになった。
 本書でも。理論と実践ということが問題とされるところがあるが、(しかも、著者の意向に反して大変申し訳ないのだが)実践を伴わない読み込みもできるのではないか・・・と思った。
 本書の解説では、マルクス主義者としてもアルチュセールに対しては辛辣な批判をしているように見受けられたが、マルクスを解釈する「その手法」については、その後の思想家に影響を残したようだ。
 それは、マルクスを(すでに死んだ)社会主義イデオロギーの象徴として読み込むのではなく、ある分析的な思想家として読み説く可能性を示唆しているように思う。

 本書はやはり名著なのだと思う、自分の偏見で世間を狭くしていたことに気づいた。