110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

物の本質について(ルクレーティウス著)

 本書は紀元前1世紀ごろ、ローマにて著作されたもの、現在は岩波文庫版で(日本語でも)読むことができる。
 (いままでの書き出しに合わせるとこんな具合か)

 今から、2000年前の思想で、荒唐無稽なところもあるのだが、神の存在が否定され、(逆説的に)自然科学信仰が生まれている時点(現在)から見ると、本書の立場に同意する人は多いのではないだろうか?
 時々、文中で「はっ」とする事もある。

 自然を擬人化して、人間に問いかけるというのが以下の引用の部分。
 おお死すべき人間よ、何だってお前は余りに痛々しい悲鳴にそのようにひたるのだ?
 何だって、お前は死を嘆き悲しむのだ?
 今は過去となったお前の以前の生活がお前にとって喜ばしいものであったとすれば、又お前の幸福がいわば穴の開いた器の中へでもかき集めたもののように流れ抜けてしまって、満足を得ることなしに失ってしまったというならばとにかく、そうでない限り、ちょうど宴の客のように生命という御馳走に満足した心持で平穏な休息を求めようとはしないのか?
 ばか者め。
 又、お前が享けたものが徒に流れ消えうせたとして、嫌な一生だったとしたならば、何だって更に多くを加えたいと望むのか?

 むしろ生命、即ち、苦難に終わりを告げようとはせずに、ただ不幸のうちに再び失い、満足を覚えずに消えうせるようなものを望もうとするのか?
 これ以外には、お前の満足するようなことは何も俺には案出することも考え出すこともできない。
 何事も万事は同じことなのだ。
 たとえお前の肉体が年齢故に衰弱しないとしても、お前の手足が弱りきって衰えてしまわないとしても、たとえお前が行き続けて、全世代を生き延びたとしたところで、又、たとえお前は決して死ぬことがないということになっているとしたところで、万事は同じことではないか。

 ・・・ある意味、実存主義的なところも伺えるように思う。