110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人間とは何か(マーク・トウェイン著)

 本書は1973年第1刷の岩波文庫版、私は1989年第23刷版を読む。

 本書を読まれた方が多いということなので、もしかすると、コメントは不要かも知れない。
 19世紀末から20世紀初頭に刊行された、トウェイン氏の晩年の著作で、表紙にもあるように「人間が環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎない」と説き、当時として余りにペシミステックな内容なので、家族に出版することを止められた、といういわくつきの著作だ。

 しかし、本書は現在読むと、それ程「ペシミステック」と捕らえられないような気がする。
 それよりも、哲学的な内容に対して、多方面にわたる問題を、安易・簡明な言葉使いで、教えてくれるとても良い作品のようにも思える。

 善悪についての考え方や、言葉の持つ表現と意味の乖離、モノの持つ価値観についてなどなど、現在でも考えていかない要素が、ここにはある。
 著者の考え方について、それを直接批判するという読み方もあるだろうが、そこから更に新しい問題意識を持っていけるような著作だと思う。

 ちなみに、久しぶりに岩波文庫の赤版を読んだ(でも、本書は、私的には青版だと思う)。