110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

祝祭性と狂気(渡辺哲夫著)

 本書は岩波書店2007年刊行のもの。
 渡辺氏の著作では「知覚の呪縛」が印象に残っている、その本のおかげで、精神病(狂気)ということについて考えるようになった。
 
 本書では、精神病の最近のカテゴリーで分類できない症状について追求する。
 それは、本来人間が持つ「動物性」というものだという、しかしながら、「動物性」を否定することで文化・文明を築いてきた人類が、「動物性」に回帰(後退)することはできないだろうから、「動物性」を二重否定するということ(「反反動物性」)という形で、隠されたまたは抑圧された、人間の持つ動物性を認識するということが、必要なのではないか。
 そのような事を著しているように思う。

 本書では、再び、市村正弘氏の著作「小さなものの諸形態」が取り上げられ、渡辺氏が解説をするような部分も見受けられて「知覚の呪縛」の時のイメージを再確認することができた。

 人間が持っていると思われる「得体のしれないもの(自然性)」について、現在の状況ではそれを隠そうとしているようだ。
 しかし、それでは、隠されたもの、抑圧されたものはどうなるのだろうか?
 それは、大きな圧力となって、場合によると、何か、別の症状や表徴となって、実体化するのではないか?

 でも、そういう(おとぎ)話はは20世紀の話題としてすでにタブーとなっているのかもしれない。