110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

生きられる時間(E.ミンコフスキー著)

 本書はみすず書房刊行のもの。

 哲学から発生してそれを精神病理学に反映させること、もしくは、精神病理学から哲学へフィードバックすることという関連性は、特に最近の自然科学としては難しくなってきているように思う。
 現在であれば、精神病と認定された人の脳の状態をモニターしながら、その働きが、健常者といわれる人とどのように違うのかをモニターすることができる。それは、それまでの医者と患者問答形式で、その思想を推定していくという方法とは異なった部分があると思う。
 しかし、例えば、脳の状態の変化や脳内での化学物質の調整(坑鬱薬など)で症状を回避することはできるが、その原因についての追求は未だ難しい部分もあるのではないだろうか(・・・多分、専門家は否と答えると思うのだが)。
 医学から離れている者から、本書を読むと、細かい内容についてはいちいち把握することはできないのだが、まさに、本書の題名である「生きられる時間」というものと実時間のずれが、精神に様々な病状を引き起こすことになるのだというイメージが伝わってくるのだ。
 そして、本書によって、例えば、ベルクソンにさかのぼってみたり、また、メルロ=ポティなどの(現象学的にかな?)哲学(思想)へと移行する要因にもなると思う。
 お恥ずかしい話、具体的な事例が無いと物事が把握できないので、本書のような事例から、更に抽象的な世界への興味や理解が助長されることもあるのだなと、思うのだ。

 しかし、本書を読むのは骨が折れた、記録を見ると、1巻は7月7日に読了したが、2巻を終えたのが本日であり、こんなに間が開いたら、1巻の内容は覚えていないのだ。
 そういう意味で、私の本書のコメントはいい加減だと思うが、本書はまぎれもなく多方面で引用された良書であることは(それは)間違いない。

 「生きられる時間」という言葉は、重みのある言葉である。