110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

司馬遷(武田泰淳著)

 本書は、史記の世界と副題の付いた、武田氏の著作、1943年に日本評論社から刊行されたもの、現在は講談社文芸文庫で読める。

 史記については、武田氏の著述から興味を持つようになった、いきなり変なことを書くが、現在の混沌とした日本の現状について、そして、この先の社会や政治を考えるにあたって、この「史記」の内容がすごく参考になると思う。
 現在は、武力による戦争は減少したが、それに変わる、経済、貨幣を媒介にする戦闘状態ではないのだろうか、かろうじて、日本は未だ国の形態を保っているが、世界的には多数の国が、分割・統合・そしてイデオロギー的な破綻を示している。 
 そこにあるのは、史記に端的に現れる、諸行無常のような滅びの世界であるように思う。
 しかし、そこには、滅ぶとともに、生まれるものがあり、ちょうど生物の新陳代謝のような、ドラマテックな変態があるのであり、それを、消極的に「諦め」るのか、また、(ベンヤミンの様に)楽観的に「期待」するのかは、それぞれの、読み解き方によるものであろう。

 本書は、私にとっては、史記という書物の魅力を教えてくれただけでなく、現在について流れる、歴史性に気づかせてくれた本である。
 このブログでは初会しなかったが、武田氏の「心身快楽(しんしんけらく・・・講談社文芸文庫)」の「滅亡について」という小論とあわせて、いろいろと考えてみたいと思う。
 また、いつ実現するかは分からないが、「史記」そのもののの現代語訳を一通り読んでみたいと思った。

 そんなことを考えた本であった。
 ちなみに、史記は漫画版でもあるようだ、もしそちらでも熟読されている方は、良い(知的)財産を得たことになるのだろう、うらやましい限りだ。