110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

市場の秩序学(塩沢由典著)

 本書は1990年筑摩書房刊行、私はこれをちくま学芸文庫版(1998年)で読む。
 最近、経済に再び関心が出てきた、しかし、当然のことながら、数学は苦手なので数式の多い近代経済学系のものは遠慮したいところ。
 しかしながら、本書は、その近代経済学新古典派)の欠点を指摘するもの。
 いわく「一般均衡」という理論が、現実の世界に適応していないこと、そして、それを発展させた理論については、理論的な問題もさることながら、大きな壁があることを指摘している。

 本書には「不況への転換が恐慌という急激な形をとりうるのに対し、好況がかならず徐々にやってくるのはなぜであろうか」という一文があり(「恐慌」というのは少し言葉のニュアンスが違う気もするが)、今回の事態もその事例のひとつになるのだろうか?
 本書は、1970年から1980年に掛けての著者の論文を集めたものであり、途中、数学的な説明を除いては、楽しく読むことができた。
 本書において気づいたことは、本書の中のモデルは、必ず、製造もしくは商業をベースにしたモデルであり、金融商品の様なモデルは出てこないのだ。
 金融商品が世上を賑わすのは、20世紀後半から現在に至るところであろうと予想する、だから、的確なモデルというのは少ないのかもしれない。
 しかも、そのモデルも、本書のような複雑性の欠点を持っているであろうから、厳密なコントロールは難しい(不可能)であると予想される。
 そして、金融商品も付きつまるところ、実体経済に最後は決済してもらわないといけないのであろうから、問題はまだ根深いと思うのだが・・・・。
 どうも言葉は悪いが、金融操作という、未来の先喰いによる繁栄については、何か違和感を覚えるのだが、それは何故だろうか?