110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

自画像としての都市(井尻千男著)

 本書は東洋経済新報社1994年刊行のもの。

 日本の都市の景観が汚いのは何故かということを考察した書籍。
 時代的には、バブルが崩壊して日本が低迷している時のもの、それと同時に、アメリカも低迷た時期のようで、その相関が面白い。
 相関の、何が面白いのかと言うと、本書では、日本を最終的に批判したいのだろうが、参照する事例として、アメリカとヨーロッパを比較する。
 アメリカは、経済原則のもと個人の自由に任せるがために、都市としてのまとまりはなく、ヨーロッパでは、そこに規制が入り都市の秩序が保たれる。
 そこには、経済優先・成長主義と地域共同体・人間中心主義との(比較しづらい対称だが)対比があると言う。
 日本は、ご他聞にもれずアメリカの後を追っている。

 高層ビルが立ち並び、商工業地域と居住地域が、一見合理的に分断されている、現在の日本は、アメリカに近い都市思想を感じられる。

 本書が著されたその時点では、アメリカは低迷していた、そうすると、その後を追いかけている日本もその状況に陥るのだろうか?
 いや、既に、追いかけることによって、現実に状況が悪化したのでは無いのだろうか?

 その国の思想が凝集され、象徴的に現出したものが「都市」なので無いか?と本書では語っている。
 確かに、そういう傾向があることに同意したいのだが、この精神分裂症の如き「東京」について、そして、そこに棲む者として、これを喜ぶべきか、悲しむべきか。
 ・・・・・・・?