110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

昭和金融恐慌史(高橋亀吉・森垣淑著)

 本書は1968年清明会新書として出版されたもの、現在は講談社学術文庫版で読める。

 学術文庫版は、1993年に文庫版化しており、おりしもバブル崩壊後の時節に刊行された、そして、現在はそのバブルの最安値を更新してしまい、今後の展開が予測できない時点で読むことになる。

 昭和2年というから、昭和と言う時代はとにかくダイナミックな時代だった様だ、昭和天皇に関する書籍を読んでも、余り本件は触れられていない、政治と経済の連関がさほど緊密ではなかったのだろうか?
 
 本書を読むと、(第一次)世界大戦中の好景気が終結したにもかかわらず、需要がその延長にあると言うような幻想を持ち現実把握ができない資本家とそれを支えてしまう機関銀行、双方の癒着により本来回収不能な過大投資に資金を投入・凍結され不良債権化していたことが分かる。
 それは、一種のバブルとも言う状態であったのかもしれない。
 この昭和2年恐慌に対する、日銀・政府の対応については本書の評価を仰ぐとして、本書の中で、この恐慌については「実体経済」の影響が低かったことを指摘している。
 すなわち、無謀な投資をした金融業(銀行)については影響があったが、(当時であれば)製造業などの実体経済への影響は(もちろんゼロではないが)少なかったようだ。
 さて、翻って、現在の状況を鑑みると、未だその全貌を見ることはできないが、もし、実体経済への影響が発生するのならば(現実に、例えばトヨタなどが50%の減益予想をだしているが)、今回の状況は、また違った側面を持つ事象だと言えるのかもしれない。
 現在のアメリカがそうであるように、金融という産業(?)が、一国の所得の大きな割合を占める現状は、ある意味、危険性を持っているようにも思う。

 もしかすると、既に、実体、虚像の2つの経済(産業)が交錯するような世界の構造に陥っているのかもしれない。