110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

夜と霧(V.E.フランクル著)

 本書はみすず書房刊行のもの初版は1961年、私は1992年版を読む。

 本書は、既に読まれたりしてる方も多いことだろう、思想・哲学系の本を読んでいても、度々引用や参照されている。
 ドイツ強制収容所での自身の体験を、精神医学者である著者が、書き記したもの。
 その内容に驚くとともに、やはり、本当に体験していない者(私)には超えられない(歴然とした)「壁」があるように思う。
 ここでは、理性などは崩壊している、その異常な世界で、自分を喪失しないことが最終的には重要なことであることが、頭では分かる。
 しかし、その状況で私は、「カポー」にならない自信はない。
 それほど、平和に慣れていることに気づくのだ。

 そして、そこには、宗教と形而上学の世界がある(20世紀にこれらは批判されている)。
 もし、理不尽な世の中が訪れたとき、私は何を支えにできるのだろうか・・・それは、理性で制御できるのだろうか?

 ちなみに、現在の閉塞感を考えるヒントが本書にはあった。
 ・・・彼自身の未来を信じることのできなかった人間は収容所で滅亡して行った。未来を失うと共に彼はそのよりどころを失い、内的に崩壊し身体的にも転落したのであった。・・・・
 フロイト精神分析の手法を民族の文化に適用した。
 稚拙なやり方(類推)だが、同様に考えると、現在(の日本)は、未来を喪失しているように思う。
 そして、本書からの教訓では、ひどい状況でも生存は可能だが、未来を喪失すると危険な状況になる。
 だから、いち早く未来を取り戻すことが必要なのではないだろうか?

 そんなことを考えた。