110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

知恵の樹(ウンベルト・マトゥラーナ,フランシスコ・パレーラ著)

 本書は1987年朝日出版社刊行のもの、私は1997年のちくま学芸文庫版を読む。

 本書はオートポイエーシス(自己創出)という生物学の考え方から出発して人間社会へ至る、(この)世界を概観する著作、そして一部批判的でもある。

 最近、この手の生物学的な考え方が好きになってきている、本書も、単体の生物が、複数の協調により成り立つ多細胞生物を生み出し、その後「言語」というものを経由(交換)して存在する、いわゆる人間的な生物が存在しているという、3つの段階を易しく説明している。
 その背後には、それぞれが個体として生存するのではなく、それぞれが関係し、その関係性の中で変化しながら、いわゆる世界・または社会というものを構成しているのだ、という発想が伺える。
 ということは、(批判的な意味ではなくある種比喩的に)スピノザの汎神論のような図式も思い浮かんでしまう。
 まぁ、そのあたりの捉え方は、本書を読んでそれぞれ考えていたければ良いのだろうけれど、最後に、出てきた「愛」ということ、またその少し前に出てきた「利己的・利他的」というところでは、少し考えさせられたとこがある。

 この「愛」ということ、それぞれが関係しあいながら生存しているという事の射程は、どこまでなのか?
 本書では、35億年前の初めての生物の形体を、人類も継承しているとしている。
 それならば、やはり、人類と言う種だけではなく、もっと広く解釈するべきなのだろうか?

 事実、歴史上最も凶悪な種は「人間」であるのだから、そうすると、その自己矛盾性に悩むことになるのではないのか・・・・?

 そんなことを考えながら読んだ本。