110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

夢の精神分析(エーリッヒ・フロム著)

 本書は、東京創元社1971年刊行(改定新版)のもの。
 
 表題のように、夢の精神分析について、フロイトユングそしてその中間(フロム)と3者の立場で解説するという前半と、神話やギリシャ悲劇、カフカの小説などを題材に、そこに著されている人物像をもとに、作者の思想(心理)を分析するという後半に分かれる。

 本書で、面白かったのは後半の部分で、或る意味社会批判的な要素も伺える。
 これも、古い作品(オリジナルは1951年)なので、現代に未練の無い人は探して読んでも面白いと思う。
 そこには、父家長制社会と母家長制社会との対立、また、文明と自然の対立などの論点がでてきて、私的には、大変共感する部分も多かった。

 ただし、現代の社会はある意味「もどれないところ」まで来ていると思うので、賢明な諸氏に無駄な骨折りをお勧めはしない。
 そう、(人間の)文明が自然を超克するかどうかが問題なのだろう。