110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

盲人はつくられる(ロバート・A・スコット著)

 本書は1992年東信堂という出版社から刊行された、私はリサイクル書籍として入手した。
 元になる著作は1969年に刊行されているから、随分古めかしいという印象を受ける。
 そして、本書の解説にもあるが、本書の題名から類推して、盲人に関連する人々、ご当人(読めないか?)、病院や施設関係者、行政関係者などにしか読者はいないのではないかという懸念が指摘されている。
 その懸念は、多分正解だろう、本書は、リサイクル書籍の棚に最後まで残されたいくつかの本のひとつだったのだ。
 そして、入手してから読み終わるまでに随分寝かせてしまったことも事実だ。

 さて、その本書についての感想だが、・・・随分考えさせられることになった。
 題名にあるように、本書では、「盲人」という者(モノ)は、(健常者による)社会の制度により、意図的に作られるという内容でる。
 そして、そのことに起因する、様々な問題点を指摘しているのだ。
 社会的な制度としては、盲人が、そのハンディを克服して社会に適応する「回復的アプローチ」の方が、その盲人という、社会的なラベル(ステレオタイプ)を貼られ、その制度に依存的に適応してしまう「適応アプローチ」の方よりも望ましいとしつつも、その望ましい対応が阻害されているという事態(例えば、病人がいなくなると病院経営が不調になると言うジレンマ)を指摘している。
 そのような内容である。

 さて、そこで「考えさせられたこと」とは何かというと、「盲人」を「老人」にしたらどうなるだろうかということだ。

 例えば、病状としての「認知症」になる人は、7人に1人といわれている(また、短期的には全ての人が認知症になる)。
 そのためのシステム、例えば介護保険制度なども整備されてきている。
 しかし、それらのシステムの視点は、残念ながら、健常者の視点であることは間違いない。
 そして、そのための施設の状況はどうだろうか(調べてみると良くわかることだ)?

 本書では、あくまで「盲人」という形で姿を変えて問題提起をしたわけだが、より一般的な表現に変えることで、その深刻さが表面化するのではないかと思う。

 私たちは「高齢化社会」ではなく、既に「高齢社会」に棲んでいるのだ。