110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

現代日本人の恋愛と欲望をめぐって(岸田秀・竹田青嗣著)

 本書はKKベストセラーズ1992年刊行のもの。
 17年前なのでもはや表題にある「現代」に該当するとは言えないと思うが、対談する二人に興味があったので読んでみる。

 内容は、恋愛論として「現代日本人の恋愛と欲望」「男と女のスレ違いを考える」、自分論として「人はなぜ自己中心的になるのか」、家族論として「マザーコンプレックスを考える」、そして最後の章で「個人と社会のかかわりをどう捉えるか」と題して、岸田氏と竹田氏の双方の思想を簡単に紹介するというもの。

 文章上は、竹田氏が、岸田氏の「唯幻論」を批判しているようにも思えるのだが、この2人は意外と仲が良いのかもしれない。
 岸田氏は、フロイトの様に、社会批判する場合にも「唯幻論」の手法をあてはめていこうとするのだが、これに対して、竹田氏は、必ずしも社会というのは、ひとつの人間、精神があるもの様には反応しない、もっと、個々の人間の意志(精神)の集約されたもので、一元的には決められないという立場をとっているように思われる。
 比喩的に、岸田氏がマクロ的、竹田氏がミクロ的な立場なのかなと考えた。

 さて、本書はそんな双方の立場の違いが浮き上がった形で面白かった。
 そして、17年前という事は、このときの議論の対象だった年齢層が、ちょうど私ぐらいの中年になっているということで、この討論がどのように「現在」に反映されているのかに思いを巡らすと面白いのではないかとも思った。