110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ファウスト(ゲーテ著)

 本作は岩波文庫版で読む。

 古典や名作と言われているものには、興味が無かった・・・ここ数年前には。
 それは、既に古くなったものだという先入観があったからだ。
 30代までは、ビジネス書をよく読んでいた。
 そこにも古典というものはあったが、概して、古いものは現実に合わなかった。
 しかし、哲学・文学・詩などの世界は、そうではない。

 流行には理由があると思う、しかし、そうでない世界もあるのだ。
 不思議な世の中になったと思う、そういう良いものが、得てして安いのだ。

 さて、本書をある種の救済劇として、また宗教的・神話的なものとして片付けてしまえば、これだけの大著を読み進むことはできない。
 その中にある、人間の多面性に思いを凝らすと、様々なことが考えられよう。
 本書では、大きな世界、小さな世界という、2つの世界が出てくるが、(私的には)このうちも小さな世界での事柄が、彼(ファウスト)を救ったのではないのか?と思うのだ。
 これは、余りにも宗教的な考え方かもしれないが、人間が生まれてから、青年・壮年期は、社会(文化・文明)に埋没する・・・即ち(本書で言う)大きな世界に君臨する、しかし、その始まり(幼年期)や終わり(老年期)は、小さな世界に棲むようになるのではないか?
 これは、単なる歴史の重層性について言っているだけなのかもしれないが、要は、人間が少なくとも、複数の全く別の価値観のある世界に棲んでいるのではないかと思うのだ。

 例えば、TVやブログの世界は、そのひとつの側面でしかないのだ、しかも残念ながら、この世界は、虚像と実像が混在している、その中から実像を選び出す眼力は、私には無いのだ。
 それは、寂しいことだが、実は、嬉しいことでもあるのだ。