110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

二十一世紀の資本主義論(岩井克人著)

 本書は2000年筑摩書房刊行のもの、私は、2006年初版のちくま学術文庫版を読む。

 岩井氏の本は、何故か見つけると読んでしまう。
 内容的には、毎回貨幣論を中心とした、資本主義経済の考察なのだが・・・・。

 そして、本書でも変わらないスタンスであり、本当に二十一世紀の資本主義論など語ることができるのだろうかなどと、懐疑的に思ったりもした。

 しかしながら、最近の不況を考えても、氏の提唱する事、貨幣自体がある種の幻想(マジック)の部分がある以上、何らかの不均衡は生じてしまうということ。
 そして、その鍵を握るのが、基軸通貨である「$」ということになる。

 アメリカと言う国は、諸国の中の一つという立場と世界の基軸通貨を持つ国という、2つの側面を持っている。
 このバランスが崩れるときには、世界の経済システムに大きな影響が及ぶことになる。
 しかし、この基軸通貨とは、不変なのだろうか?

 もし、この変更が起きたときには、大きな経済上の衝撃が起きるだろう。
 まさか「元」にはならないと思うが・・・・

 その他、現在の株式市場=美人コンテスト論を、ギリシャ神話に紐つけて説明する「美しきヘレネーの話」など、とても楽しく読むことができたのだ。

 本書で繰り返し、資本主義は絶え間ない差異の創造による発展である、と言うようなことが書かれている。
 日本と言う国も、ここまで絶え間なく差異を作り出してきた。
 しかし、国としては老境に向かい(一つの指標は平均年齢)、その差異を作り出す能力の低下傾向を皆感じているはずだ、長期的にこれにどう対応するか?
 ・・・これが、焦点であろう。