110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

生きものの建築学(長谷川尭著)

 本書は1981年平凡社刊行のもの、私は1992年初版の講談社学術文庫版を読む。

 学問の交差するところには面白い視点が生まれると思う。
 本書は建築学と生物学というような学問の交差点上にある。
 いや、<建築>と言うだけでも、自然科学的な、例えば構造計算の様なものから、デザインといった美的・芸術的な要素、そして、最近は少なくなったと思うのだが、宗教・哲学的な要素、そして、政治(学)、社会学という(権力的な)要素も絡まってる・・・建築は奥が深いのだ。

 そして、本書では様々な視点から、様々な生き物の<巣>と「にんげん」の<巣>を比較するのだ。

 私としては、本書の中では、たくさんのエネルギーを利用して、快適性を維持する人間の知恵よりも、確かに大変な労力を使うかもしれないが、より少ないエネルギー(高効率)で、気温や空気(換気)のコントロールをする生きものたちの<知恵>(単なる本能ではないか・・・という反論もありそうだが)に軍配を上げたい。
 それは、たくさんの試行錯誤の賜物なのだろう。

 そして、本書の「子どもの成長と共に大きくなる家(巣)」という、コンセプトに接したときに、人間が捨ててしまった<モノ>の欠片みたいなものを見つけた気がするのだ。

 本書の文庫版のリリースから既に15年が経過し、周りを見回すと、蜂の巣のような、高密集型、すなわち(超)高層建築のマンションが増えてきた。
 それは、時代の方向性なのだろう・・・しかし、意外とそういう高密集度の<巣>は、共通の空調などの配慮をすれば、省エネになるのかもしれない。
 それは、個人主義を乗り越える、一つの契機なのかもしれないな。

 そんな事を考えてしまった。

 ・・・それにしても、都議選の選挙演説はうるさいな(違法ではないのだけれどもね)。