110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

競争社会をこえて(アルフィ・コーン著)

 本書は法政大学出版局1994年初版のもの(オリジナルは1986年)。
 本書は、良く古本屋で見かける、隠れた良書なのだろう。

 さて、本書は特に教育現場を意識して著されたもの「協力学習」という用語からそれをうかがい知る事が出来る。
 現在は(も)競争社会であろう、しかし、本書の指摘によると、実際は、各人が競争的な状況よりも、協力的状況で課題に対応した方が、生産性が高いという結果が出ている。
 それならば、協力的な社会に変えたほうが有利なのではないか?
 という結論になる。

 そして、例えばそうだとしても、なかなか実現しにくいことであることも分かる。
 ここで、囚人のジレンマの例が比喩的に出てくる・・・もし、皆が協力的で、そのうちの一人が、競争的ならば、そのグループの成果を独り占めするのではないか。
 いや、そもそも、独り占めとはなんだろう?
 金銭的な要求か、社会的なステータスか?
 そう考えると、どこにもある、社会的な階層に思い当たる。
 そう、首相は一人、大統領も一人・・・・。

 ちなみに、日本は競争的なのだろうか・・・確実に現在は競争的だと思う。
 しかし、非常によじれたケースかもしれないが、協力的な時代が最近まで有ったのではないか?
 (よじれたと言ったのは、日本の製造業と言う競争的な立場でありながら、協力的な活動があるということ)
 それは、例えばQCサークルで、残業もつかないのに、企業のために、従業員が協力して知恵を出す・・・そういう姿は、特に海外からは、奇異に思われたのではないだろうか。
 しかし、それも、リストラや多国籍化、製造業の国内での人気の低下などで、その活動自体、余り聞かなくなった(多分、現在もそれは進行しているのだろうけれど)。
 
 そういう事を考えると、本書には、いみじくも、考えさせられる余地があるのかもしれない。
 うがった考え方をすれば、協力的な社会が出来ると、やりにくい要因があるので、競争的な状況・・・言い換えると、個人主義的な状況を維持しているのではないか?
 日本は、その戦略にある時期を境に、まんまと乗ってしまったのではないか?

 まぁ、立証するだけの資料は無いので、空論ではある。