110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

日本語と世界(大野晋著)

 本書は1989年刊行の講談社学術文庫版を読む。

 私は、日本語について詳しく知らないのだから、本書の大半は、なぞり読みした程度だが、ただ一つ「狭山事件の脅迫状は誰が書いたか」という一章は、大変興味を持って読んだ。

 狭山事件について調べてみると、被告が無期懲役のまま刑が確定され現在に及んでいる。
 大野氏は、国語学者の立場から、当時の被告が、この脅迫状を書く能力があつたかを判断し、否定的な見解を示した。
 しかしながら、現実の裁判では、証拠能力なきものとして認められなかったのだ。

 本件について、事実はいかなるものなのか、それは未だわからない。
 しかし、現実には、小説(フィクション)よりも不可解な事象も存在するのだ。

 それは、言葉(ロゴス)や論理(ロジック)が、捻じ曲げられることなのだ。
 歴史的には、度々繰り返されていることなのだろうが・・・