110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

智恵子抄(高村光太郎著)

 本書は新潮文庫版で読む。

 先ほど上げた「狂気と家族」その前の「死にゆく妻との旅路」を読んだ後の、本書は、普通の心境ではない。

 智恵子は、自分から狂気に陥ったのか?
 それとも、例えば光太郎との関係でなのか?
 それとも、何かの病的要因なのか?

 そして、
 本書では、たった2人で世界を存在させる、稀有な例を知ることができる。

 
 あなたのきらひな東京へ
 山からこんどきてみると
 生まれ故郷の東京が
 文化のがらくたに埋もれて
 足のふみ場もないやうです。
 ひと皮かぶせたアスファルト
 無用のタキシが充満して
 人は南にゆかうとすると
 結局北にゆかされます。
 空には爆音
 地にはラウドスピーカー。
 鼓膜を鋼で張りつめて
 意志のない不生産的生きものが
 他国のチリンチリン的敗物を
 がつがつ食べて得意です。
 あなたのきらひな東京が
 わたしもきらひになりました。
 仕事が出来たらすぐ山へ帰りませう、
 あの清潔なモラルの天地で
 も一度新鮮無比なあなたに会いませう。
(報告)