110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

狂気と家族(R.D.レイン・A.エスターソン著)

 本書は1972年初版のみすず書房刊行のもの。

 精神分裂病(現在は統合失調症)と診察された、患者とその家族の了解を受けて、行われたインタビューを抜粋して、11例を掲載したもの。
 専門的・論理的な記述は無く、実際に話された言葉が記載されてあり、専門家ではない私にはありがたい書籍だ。

 精神病に関して、いわゆる環境、本書では家族の影響というものの、因果関係はどの程度のものか、また、本書だけを元に、関係ありとするべきか、ということは非常に難しい問題であろう。
 しかし、本書に出てくる事例では、どうも家族、特に親と子の関係での、本書で言うところの「欺瞞」が、その病気の引き金や、維持、再発に関係しているのではないかと思われる。
 自分について考えてみても、月並みな表現だが、自我を維持するために、自分に不利なこと、悪いことを捻じ曲げ、正当化していかないと、日々生活できない面がある。
 それは、自分が悪いと反省するのではなく、それを、何かモノであるとか、第三者に投影して、均衡を保とうとする(八つ当たり)ことがある。
 しかし、そういう事柄も程度問題で、それを投影された相手の感受性、忍耐の閾を超えれば、精神的な破綻を引き起こすこともあるのではないか?

 そういう因果関係を、社会に拡大すると、例えば、凶悪な映像などを、社会一般で見せないようにするなどの、倫理的・道徳的規制と、表現や情報などに関する自由という対立的な論点に発展しそうだ。

 統制か?自由か?
 
 哲学的なことと笑っていただきたいが、人間は、果たして知ることが良いのか、知らないことが良いのだろうか?

 現在、家族と言う枠を超えて、いろいろな情報が、個人に対して、受動的、主導的に(外部から?)入ってくる状況だ、このとき、もし社会自体が精神病的な構造であった場合は、どうなるのであろうか。