110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

富国有徳論(川勝平太著)

 本書は1995年紀伊国屋書店刊行のものに含まれた対談(これは興味あるものだが)を除いて中公文庫版として再編したもの(2000年刊行)を読む。

 1995年、著者は日本のとるべき道は「富国有徳」の道であるとするもの、さて14年を経て、どういう感慨を持つだろうか?
 例えば、本書の中には遷都の話が出ている、そういえば、そのような話が具体的に浮上したことがある、しかし、現在それを実行するための膨大な財源は捻出できないのでないのだろうか?
 また、ここでいう「有徳」も、現在の日本では、随分めっきがはげているように思う。
 アジアのリーダーは(現在)どこだろうか、1995年当時は日本だったのではないか、今はどうだろう?

 その回答は、例えば私は初めてその名前を知ったジョン・ラスキンの経済思想や、第3部に書かれた、今西錦司宮沢賢治など、今はその面影のない、その当時の日本を土台にした思想を再考することで見えてくるかもしれない。

 私も、「新しいものは善いもの」という呪縛に随分縛られてきた、未だに、少し気が緩むとそうなってしまう、しかし、それは明らかに間違っている、だからといって、回顧主義に陥るわけにも行かない。
 最近、山本夏彦という著者を知り、現在の日本語の<その>言葉の少なさを思い知らされている。
 だから、言いたいことは言うことができず、考えたくても考えられず、そして、口当たりのよい、けばけばしたもの、そして単純なものを追いかけているような気がする。

 それは、とても寂しいことだと思う。