110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

李陵・山月記(中島敦著)

 本書は、小学館文庫(いちばん読みやすそうだった)版で読む。
 表題作のほか、「悟浄出世」、「牛人」、「盈虚」、「名人傳」、「弟子」の7編を収録されている。
 
 ちなみに、随分前に、お気に入りにある「大三元(読書のあしあと)」さんのブログでも紹介されているので、書評をご覧になりたい方は、そちらをご覧くださいませ。
 また、「悟浄出世」を読んでいたら、「独言悟浄(独言悟浄のわめき)」さんのブログを思い出してしまった、何か本編とも共通するところがあったので、興味のあるかたはご覧ください。

 さて、中島敦氏の著作を読もうと思ったのは、山本夏彦氏の著作を読んだからで、何故、最近の日本語は分かりにくくなったのかという問いに、それは、奥深いところでは(日本における)「漢文」、そして、「文語文」が衰退したからだ、という趣旨の記述があり、その中で、中島敦という名前、作品が登場するのだ。

 そして、実際読んでみると、やはり面白いのだ。
 本書の中では、「名人傳」、「悟浄出世」、「弟子」などが善い。
 現在は、もう哲学のようなものは消えたのかもしれないが、それでも、自分がどこから来て、どこへ行くのかを、(まぁ、暇ならば)考えることがあろう。
 それを考えるヒントになるように思ったのだ。

 「答えが出ない問題の答えは何か?」

 そんな事に興味があれば本書は面白いかも知れない。
 そして、諸編の内容が、中国の古典を起源としていることに気づくと、もう少し、楽しい(時間の)旅ができそうな気がするのだが・・・・

 昨日も、また一日中歩いていたのだが、今回は、あちこちと目に付いた古本屋に入って、休憩と目の保養をした。とあるお店で物色すると、「荷物おきなよ」とまず一声、そして「哲学(書)少なくなったんだよね」と、店主に言われた。特別、話しかけたわけでもないのに、自分の心を見透かされて様でドキとしたが、こういうお店もまだあるのだと、少し、ほっとしたのだ。