110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

精神分裂病の世界(宮本忠雄著)

 本書は紀伊國屋書店刊行のもの(初版は1977年)、題名からも古さがわかるだろう。

 本書については、表紙裏に
精神分裂病ほどわれわれの日常生活と深くかかわっている病いは少ない。それに対する理解も、一歩誤れば皮相で危険なものになりやすい。
 著者は、分裂病やひろい意味での狂気は、健康な時代であれば排除されるべき虚像とされてしまうが、時代が非人間化の徴候を示すようになればむしろ実像となるという視点のもとに、その歴史、症状、理論をはじめ、人間の孤独や患者の破局感を描いた文学や絵画、この病いに深い関心を示した哲学についても考察している。とりわけ、日常的な世界とは別の、敵意に満ちた、いわば心理的<反世界>で孤独と苦闘しながらも、他方で社会に対してなまなましい関心を抱いている患者の心理と論理を追求することによって、本書は、この病いが現代人につきつけるさまざまな問題を提出した優れた文明論となっている。」
 とある。

 精神病、神経症などの、精神に関する病は、その人の棲む所、世間との係わり合いで、変貌するようだ。
 19世紀には頻繁に研究されたヒステリーも、20世紀にはその症例が減少したように、その生きている人が掛かる病気も変化をするのだろう。
 逆に考えれば、以前は、狂気であったものが正常に、そして、正常あったものが狂気と化す場合もあるのではなかろうか?
 本書が刊行された当時も、世相は分裂症的なものだったという、その前後、ドゥルーズ/ガタリなども分裂症的な世界観を示していたようだったが。
 しかし、それが、普通になってしまったらどうなのだろうか?

 まぁ「善」という言葉の裏に「悪」という言葉が(きっちり)こびりついているように、純粋な概念(真理という人もいるかもしれない)が無いと思えば、よろしいのかもしれない。
 いわく「色即是空 空即是色」である。