110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

アラブ的思考様式(牧野信也著)

 本書は昭和54年(1979年)講談社学術文庫書下ろしのもの。

 アラブ(民族)の思考様式を、その言語形態を分析することで、探ろうという試み。
 考え方は、その時に使われている言語的な特徴は、その時の文化を反映しているのではないか・・・という仮説だ。
 ここでは、アラブという民族が対象になっているが、これを、日本人に向けるとどうなるのだろうか?

 学術的に資料を集めたわけではないが、例えば、私は、明治の人の書いた文章を理解することが難しい、わけても、文語文や漢文調のものは難しい。
 それは、何が原因かというと、根底にある文化の変化の表出であると考えてみるとどうであろうか?

 明治の小説などを読むと、いわゆる日本語として、恐ろしく語彙が豊富だ、そして、日本語として、表現が豊かだ。
 これが、常用漢字に慣れた、現在は、そういう意味での、漢字(本字)が減り、その語彙や、表現力を補うために、「何か」が現れているようだ。
 
 毎回、このような結論を書くのだが、果たして、現在はその昔、明治、大正時代に比べて、日本語の表情、表現は進歩したのだろうか?
 論理性・論理的思考の根源は、言語だとすると、この部分が退化するとどうなるのだろうか?

 危機感は持っている、そして、明治・大正の作家の文章を(最近)読むようにしているが、その閾は高いと痛感する。
 新しいものが、優れているという意味でないことを、不肖、今日、やっと悟ったのだ。