110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ダウン症の子をもって(正村公宏著)

 本書は1983年新潮社刊行のもの、現在は新潮社文庫版で読める。

 著者は経済学の教授として覚えていたので、意外な題名に惹かれて手にすることになる。

 ダウン症の子供を持つこと、そして、両親としての正村夫妻の対応が切々と描かれていく。

 本書を読んでいて思った、この世の中は、残酷な世界だと思う。
 たまたま、身体に障害が無いから、その特性が見えないだけで、その能力により、社会的地位や収入などに格差が生まれる。
 それは、家庭環境であったり、遺伝的なものであったり、その生まれでた時代性であったりするのだろう。
 幸運にも、並外れて優れた才能・能力を持っていたとしても、必ずやってくる「老い」と戦わなければならない。

 そんな時にどう生きればよいのだろうか?

 その時に現れるのが、合理性とは無関係な「個」人だ、それは、一見身勝手な振る舞いをするのだが、そこにある種の「本質」が存在するように思うのだ。
 それを、客観的科学的合理的な視線で見ることは、意味を取り違えることにならないだろうか?
 
 そして、なんとなくゲーテの「ファウスト」という言葉(題名)を思い浮かべていたのだ。