110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ブッダのことば(中村元訳)

 本書は岩波文庫版で読む。

 仏教の一番古い聖典(スッタニパータ)の日本語翻訳版である、翻訳された本文とそれに匹敵する分量の訳注が付けられている。

 本書は随分前に手に入れていたのだが読み進まずに積んであった。
 当時は本書のような古い文献は、悪い意味で古く劣ったものという先入観があった。
 翻訳者は、本書を仏教の経典にある専門用語を避けて、判りやすい口語体で翻訳したとあとがきに記しているが、その配慮も当時の私には、経典ではなく物語的なものという印象を与えてしまったのだろう。
 要するに、当時は本書を馬鹿にしていたのだ。

 しかし、ここにきて再び読んでみると、なかなか良いのだ、荒削りなところはあるが、ところどころに光る言葉がある。
 そして、根源の教えは現在では実現が不可能な程に条件が厳しい。
 それは、生きること、そのサイクル(輪廻)から外れること、妻帯せず出家し修行に励むこと。
 その究極的な姿は【この世の中】に(悟ることにより)人がいなくなること。

 だから、現在の仏教はその根源の考え方を再解釈して今日に至っているはずだ。
 例えば、浄土真宗親鸞などはどうであろうか?

 時代性を度外視して本書を読むと矛盾に陥る可能性が高い、しかしながら、その思想性を読んでいくことで、実現は出来ないまでも、その考え方をひとつの倫理観として持つことは有意義なことではないのか。

 ・・・だから、仏教として残ったのか。
 ・・・いや、だからインドでは消えたのか?