110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

われわれ自身のなかのヒトラー(ピカート著)

 本書の原作は1946年に刊行されている、そして1955年に筑摩書房、そして1965年にみすず書房から翻訳版が刊行されている。
 そして、私が手にしたのは1990年(第19刷)であり、息の長い著作であることが判る。

 ヒトラーという言葉に脅威を感じる人は少なくなったと思うが、本書の題名はなかなか気がかりなところがある。
 ナチスが台頭してきたのは、ヒトラーのカリスマではなく、それを迎合する現代人の生き方・心理・実存にあるのだ・・・・というもの。
 それは、簡単に言ってしまえば「ニヒリズム」であり、本書に即して言うと、連関性の喪失によるものだ。
 連関性とは、宗教的なもの、永遠なものであり、それを喪失するということは、刹那的な生き方になり、歴史を作ることが出来なくなるという理屈のように思える。
 だから、本書はキリスト教がひとつの柱として存在する。
 神を無くし、宗教を持たない人間は、長期的な展望を持ちにくいということなのだろう。

 当然、神というものは、人間が作り出したものだという批判はあると思うが、長期的な視野に立つときに、このような視点がないと、なかなか大きな決断は難しいのではないか?

 それというのも、こんなことを考えるからだ。
 例えば、現在の日本借金が、仮に900兆円あるとする、一応無利子だという破格の想定で、今年から10兆円づつ返済すると、90年で完済できる。
 その時、私の生存確率はゼロに近い、私は、このプランをどう評価するだろうか?
 このときに、非理性的でも「永遠性」を想定しないと、自分は納得出来ないと思うのだ。