110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

歴史哲学講義(ヘーゲル著)

 本書は岩波文庫版で読む。

 実は、手元に「哲学史序論」という題名の岩波文庫があり、これもヘーゲルの同じ著作なのだ。
 ただし、翻訳者が、「歴史哲学講義」は長谷川宏で、「哲学史序論」は武市健人であるのだ。

 そして、翻訳者が違うと、細かい言い回しやリズム、更には判りやすさが異なるので、意外と重要なことだと思う。
 当然、逐語訳的な翻訳は、場合によると日本語で意味を捉えることができない場合もあり、その文章が重要な事象を伝えているならば、致命的なこともありえる。

 さて何故、翻訳者のことを書いたのかというと、本書の翻訳者長谷川宏に興味があるからだ。
 氏の著作「ヘーゲルの歴史意識(講談社学術文庫)」を読むと(確か)解説に、氏の翻訳では「対自」や「即自」のような哲学用語を極力使わずに翻訳している・・・というようなことが書いてあった。

 そんなことをきっかけに、まず本書、そして「精神現象学」を氏の翻訳で読んでみたいと思い探しているのところだ(新本ならばすぐにあるのだけれども・・・)。

 さて、本書については、ヘーゲルの志向性が表れているように思うのだ、それは、本書が大学での講義をまとめたものであるというところからも覗えるように、啓蒙を目的にしているようなのだ。
 ドイツという国が、歴史的にここまで善く発展してきた、他国と比べても優れている、だから、国家を伸張するために、宗教と哲学、そして、それに関わる政治をもとに、更なる発展をして行こう。
 そんなことを訴えているようなのだ。
 
 私の立場で読むと、妙に捻じ曲げているのではないかと思ってしまうところはあるのだ、しかし、これは将来を担う大学の人々への啓蒙活動なのだ(と思う)。
 そういう眼で見ると(読むと)ヘーゲルという著者の真摯な気持ちが伝わってくるのだ。
 その講義に、正確性を求めるのか?それとも、将来性を求めるのか?

 まぁくだらない問題提起では・・・ある。