110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

歩くひとりもの(津野海太郎著)

 本書は1993年思想の科学社より刊行されたもの、私は1998年初版のちくま文庫版で読む。

 この著者は全く知らなかった、題名に惹かれて少し読むとなんとなく共通点が多い、だから読んでみた。

 ついに本書ではじめて「歩きながらの読書」という一章を発見した、先達は存在するのだ。
 そこには、
 「たしかに、いまの東京では私のように道を歩きながら本を読む人間のかずはきわめてすくない。・・・・みんな人生のどこかの段階で歩きながらの読書をやめてしまったのだろう。・・・・」
 と、以前は随分「歩き読み」する人がいたような記述があるのが、大変気になるところだ(今から20年ほど前の状況になるが)。

 また、本書の特異な点は、著者が本書の刊行当時50歳代で、なおかつ独身(ひとりもの)ということをもととして各編が(ひとりものの思想として)綴られたのだが、文庫版刊行時(1998年)には、なんと結婚していた・・・というオチがついていたのだ。
 自然科学の著作などでは、当時は名著として名声を博したものが、新しい理論の発見により覆され、歴史的価値のみが認められることなどあるが、本書の場合は、可能性としてはあり得るのだが、何か得体の知れない可笑しさ・違和感ががあるのだ。
 人間というのは不思議なものだ(なぁ)。