110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

小林・益川理論の証明(立花隆著)

 本書は朝日新聞出版2009年刊行のもの。

 この著者の作品は久しぶりに読むことになる、氏の著作の原点である田中角栄研究もいつか読みたいと思っている。

 さて、本書は2008年にノーベル賞を受賞した、小林・益川理論それ自体の解説ではない。
 小林・益川理論を、実際の事例としてどの様に証明したかの過程である。

 アインシュタイン相対性理論ノーベル賞を受賞しなかったことを考えると、それが、明らかに合理的なものであろうと、実証されないと認められないということなのであろう。
 そのために貢献したのが「高エネルギー加速器研究機構」の「Bファクトリー」と言われるプロジェクトであるということだ。

 さて、本書は、そういう科学的なものに対する興味もさることながら、多面的な問題が示されている。
 それは、日本という国の科学(理工系といってもよいかもしれない)離れである。

 冒頭で「・・・・テレビ局に入るやいなや、その日の担当ディレクターと打ち合わせをしたのだが、それがまるで打ち合わせにならないのである。2人のノーベル賞について説明しようにも、物理学の基本的なタームも概念もディレクターの頭の中にまるで入っていないから、話が全く伝わらないのである。・・・日本人の標準以上の知性を持つはずのテレビ局のディレクターにしてこうなのだから、一般視聴者の耳に解説が入っていくはずがない。」 
 逆に、「一般の人にわかるように説明するのがプロ」という方も居るかもしれない(そんな風に見せている解説番組も増えてきたようだが)。
 
 まぁ、どちらが善いのかは先々の歴史に任せよう。
 ただし、どの分野も深く追求すると、難しいところがあり、その肝心なところを、少し理解すると面白くなるものなのだと思う。

 私は、本作は面白いと思った、だって「何故、私がここに有るのか?」の一端に関することだから。