110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ファインマン・プロセッサ(G・ミルバーン著)

 本書は岩波書店2003年刊行のもの。

 昨年の事業仕分けで、世界一のスーパーコンピュータを作る事業が仕分け対象になった。
 本書はそれよりもはるかに難しく、もし、実現できたら(事業仕分けどころか)とんでもないことが起こる可能性を秘めたものの話だ。

 表題の「ファインマン」は、あのファインマンであり、その人が提唱した仮説に基づく動作エンジンが「ファインマン・プロセッサ」ということになる。
 簡単に言えば、量子レベルでCPUを作ることが出来ると「もの凄い」ということだ。
 どう凄いのかというと、現在の最強の暗号は、どんなに頑張っても、解読に数十年から数年掛かるはずなのだが、この量子コンピュータを使うと、難なく解けてしまう。
 すなわち、世界の情報通信の秩序を守る手段(暗号)が骨抜きにされる可能性があるのだ。
 
 ということで、本書を読んだが、その効用とコンセプトは判ったが、かなり易しく解説していると解説にはあるが、私にとっては、未だ雲をつかむような話であった(理系の才はないのね)。

 現在のところ、量子コンピュータが商業的に脚光を浴びるということは無いのかもしれないが、ある時に突然技術的な壁を越えて、私たちの前に姿を著すかもしれない。
 そのときには、私たちに限りなく現実に近い、仮想空間(世界)のシミュレーションを見せてくれることだろう。

 ちなみに、もっとやさしい著作としては「量子コンピュータとは何か(ジョージ・ジョンソン著:早川書房)」がある。